上海教育事情ブログ

上海で個別塾「上海個別塾(シャンコベ)」を運営しつつ、上海の日本人向け教育事情についていろいろと書いていきます。上海だけでなく、他の海外からの中学受験、高校受験、大学受験について、一般入試や帰国生入試に分けてリアルな状況をお話します。

志望理由書の書き方(基礎編)

前回、志望理由書の書き方(入門編)を書きました。
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前回の内容は、志望理由書を書くための心構えみたいなもので、一番大事なことではありますが、それ自体で志望理由書がかけるようになるわけではないですよね。ということで、今回から実際に書くためのプロセスに入っていきます。基礎編では、志望理由書の枠組みを紹介したいと思います。

 

1. 志望理由書の流れ

そもそも何を書けばいいの?という人も少なくないと思いますが、基本的に書いてほしいことは次の3点です。

  1. あなたの夢(未来について)
  2. その夢を持ったきっかけ(過去・現在について)
  3. そのために大学(or 企業)で何がしたいのか(近未来について)

この順番に丁寧に書いていけば志望理由書が書けます。例えばこんな感じです。

<志望理由書例>

(未来について)

私はアジアを担当する日本の外交官になり、アジア各国の関係を円滑化するためにリーダーシップを発揮したい。

(過去・現在について)

私は北京のインターナショナルスクールに6年間通ってきた。インターとはいっても、そこに通う生徒は、台湾、香港、韓国、タイなどのアジア系の生徒ばかりであった。そこで私は学年で唯一の日本人として通い、日本とアジア各国との関係を考える機会を得た。

中国で反日デモが起こったとき、中国系の生徒が私に悪口を言ったことがあった。日本人というだけで悪口を言われ、とても悔しかった。しかし、後でその話を知った韓国人学生が「私も日本の政治は好きじゃないけど、〇〇は私の友達だ」と言ってみんなに注意してくれた。そのとき私は彼の言葉に救われたし、それ以上にみんなをまとめた彼を尊敬した。そして、私も彼のような存在になりたいと思うようになった。

その後、同級生たちに日本の情報を発信しようと、観光ガイドを作るプロジェクトを立ち上げた。日本に関心があった同級生を集め、夏休みを利用して東京や大阪をまわった。ここで重視したことは、ゲームセンターを特集するなど、若い人たちで気軽に楽しめる刺激的な場所を紹介したことだ。学校で発表したところ大人気になり、北京の旅行雑誌の編集者の目にもとまり、その雑誌でも日本のゲームセンターが紹介された。

こうして私は、複雑な問題を抱えるアジア各国であっても、リーダーシップをとって適切に情報を発信していれば、良好な関係を保つことはできると実感した。そして具体的に外交官という仕事を意識するようになった。

(近未来について)

私の目指すリーダーシップのある外交官になるためには、まだまだ学ばないといけないことが多くある。歴史問題、国際政治や国際法、比較文化など幅広く学びたい。また、情報発信の手段が極めて多様で簡易化している現代において、メディアでの情報発信もしていきたい。

以上のことを踏まえて考えたとき、貴学は私の学びたいことを最も多く学べる環境だと思った。外交に詳しい〇〇教授や、メディアの実践論を教える〇〇教授などは特に魅力的だ。また留学生や留学先の大学の選択肢の多さは、さまざま国や地域の人の考え方を理解する絶好の機会だと思う。

以上から、私はアジアで活躍できる外交官になるために、貴学を志望する。(1000字程度)

(例として適当に書いたものですので、事実とは異なります)

 

2. 枠に合わせても、内容がないと陳腐になる

こうして枠にはめて書いてみると、ある程度のものが出来上がります。上の志望理由書の例も、「①あなたの夢→②その夢を持ったきっかけ→③そのために次に何がしたいか」という流れを意識して1時間程度で書いた文章です。まずこの程度まで書ければ、他の学生とそれほど差は出ないと思います。むしろ、どこかの機械で採点させれば良い点数がでるはずです。

こうした志望理由書の採点というのは、あくまでも適切な語彙を用い、論理性や一貫性、具体性があって、それが志望先と合っていればいいだけです。もっと言ってしまえば、多くの志望理由書の添削で行われているのもこの観点からの指導です。

しかし、このレベルは少し練習すれば誰でも書ける内容であり、これだけでは本当に良い志望理由を書けるわけではありません。志望理由書を出さなければならないとき、そこで相手から求められていることは、その人が一貫して何かに取り組んできたことから得た相手をひきつけるような魅力です。

じゃあ、その魅力はどうすれば出るのか。それはあなたの経験を振り返り、現在のあなたと繋ぎあわせ、それを今後どうしたいかを決める作業を真摯に行うことです。そうすることで、信念を持った人であることを相手に伝えることができます。その信念こそが魅力として相手に伝わります。

だから、志望理由書の書き方(入門編)で伝えたように、志望理由書にコツなんてないんです。自分の信念は、コツでは生まれません。コツはあくまでもきれいに見せるための服のようなものです。コツだけで書かれた志望理由書はどこか陳腐に見えます

前回は「相手の立場で考える」ということが大事でした。今回は、自分のことをしっかりと見つめなおすことが大事です。それを面倒くさいなんて思わずに、時間をかけてやってみて下さい。