上海教育事情ブログ

上海の日本人向け教育事情についていろいろと書いていきます。学校、塾、語学教室、文化教室、スポーツ教室など。

志望理由書の書き方(完成編)

前回、志望理由書の書き方(発展編)を書きました。前回の内容は、大学や企業でしたいこと(近未来の目標)についての書き方でした。そこで大事なのは、自分の得意なことや相手の求める人物像に合わせて「will」「must」「can」の割合を適切に配分することでした。

さて、いよいよ志望理由書の書き方について、最後の内容となります。最後にお伝えしたいことは、「相手の調べ方」です。つまり、相手が何をしているのか、どんな人物を求めているのか、あるいは自分がやりたいことをそこで本当にできるのか、などの詳しいことを調べることです。これは非常に大切なことです。

多くの人は相手を調べる作業が面倒だと思い、軽視しがちです。しかし、受験や就職活動は「お見合いと同じ」と言われるくらい、本当にお互いがいい関係を作れるのかを真剣に考えないといけません。大学であれば4年間以上、会社であればもっと多くの時間を過ごす可能性が高く、自分の人生の大部分の時間を費やすことになるわけですから、それは本当に大きな決断であることを認識しておく必要があるわけです。

恋愛の相手や結婚相手を考えるのと同じように、妥協せず、真剣に考えてください。今回はその方法として、大学の調べ方をできる限り詳しく説明したいと思います。

1. 大学のことを調べる手順

まず、何から調べればいいのかわからない人が多いかもしれません。思いつくことといえば、①ホームページ、②大学のパンフレット、③先輩などの話、④説明会、⑤その他の情報サイト、などになるかと思います。さて、どのように調べるのがいいのでしょうか。

1-1. まずは、ホームページとパンフレット

最初にしてほしいことは、ホームページとパンフレットの精読です。特に、「求める人物像」「アドミッションポリシー」などの内容です。例えば、慶應義塾大学総合政策学部のアドミッションポリシーには次のようなことが書いています。

総合政策学部は「実践知」を理念とし、「問題発見・解決」に拘る学生を求めます。問題を発見・分析し、解決の処方箋を作り実行するプロセスを主体的に体験し、社会で現実問題の解決に活躍する事を期待します。従って入学試験の重要な判定基準は、自主的な思考力、発想力、構想力、実行力の有無です。「SFCでこんな事に取り組み学びたい」という問題意識に基づいて、自らの手で未来を拓く力を磨く意欲ある学生を求めます。

これをただ「問題発見・解決ができる人を求めている」とだけ理解して終わるのではなく、精読してください。「実践知」とは何か、「『問題発見・解決』に拘る」の「拘る」という言葉、「主体的に」「自主的な」「自らの手で」といった言葉、などに注目してください。そして理解しようとする中でわかることは、慶應義塾大学総合政策学部の求める人物像とは、「通常の問題意識ではなく、他の人が不可能だと思っているような問題について徹底的に考え、解決しようとする強い意思と実行力を持つ人」であるということです。このように、もう少し具体的な人物像をイメージできるまで精読してください。

1-2. 実際にどんなことを学べるのかをリサーチする

さらに、その大学でどんなことが学べるのかも具体的にリサーチして下さい。これには、ホームページやパンフレット、オープンキャンパスなどよりもずっといい方法があります。それは、気になる教授の書いた本や論文を読むことです。ホームページなどの情報ではほとんど見えてこない授業で学べる中身を知ることができます。

そもそも多くの大学の先生方は、大学の授業で教えていることと専門書に書いたことがほとんど同じであることが少なくありません。同じ人間がしていることですから、当然といえば当然ですが。ということで、本なり論文なりを読むことで大学で学べることの具体的な内容を知ることができます。

手当たり次第に本を買うわけにもいかないと思ったときには、気になる教授名の後にスペースを入れてPDFというワードを加えて検索してみましょう。例えば、先のSFCの國領二郎教授に興味があるとします。そのときは「國領二郎 PDF」と検索してみるわけです。そうすると、教授の書いた論文や記事が中心に出てくるようになります。そうして何人かの先生に目星をつけて専門書を買うといいでしょう。

さらに質問があればファンレターとして手紙を書いて出版社に送ることだって可能ですよ。

1-3. 「先輩に聞く」はおまけ程度

そうした本や論文を読むことなく、その大学にいる先輩に聞くといったことだけをする人もいます。正直、これは得策ではありません。あくまで追加情報程度であり、それを全面に信用してはいけません。

というのは、大学とはいろんな切り口で見ることができる場所です。例えば、「先輩」にとっては「勉強が厳しい」と思ったとしても、他の人からすると「専門が深く学べて楽しい」かもしれませんし、「楽な授業ばかり」と思うかもしれません。ただ数人の先輩がいるからといって、それで大学全体のイメージを作ってしまうのは良くないですよね。

ですので、「先輩に聞く」はあくまで参考情報程度にしかならないと理解していてください。そもそも、学年が変われば周りにいる学生も変わります。そうして少しずつ変化していくものです。

2. 自分が相手に合うことを伝える

以上の方法で相手の求める具体的な人物像ができたら、次に重要になるのが「自分といかに相性がいいか」ということです。例えば、先ほどの慶應義塾大学総合政策学部の場合は、「通常の問題意識ではなく、他の人が不可能だと思っているような問題について徹底的に考え、解決しようとする強い意思と実行力を持つ人」が求められているということを理解しました。次に、自分がいかにその素養があるかを考えてください。ここでは、実際に慶應義塾大学総合政策学部に出すことを想定して書いてみます。

例えば、「スポーツで全国大会に出場した」や「世界レベルのコンクールで入賞した」という実績をアピールしたところでまだまだ相手の人物像には合いません。それからどんな問題意識を持ったのか、そして、どんな解決方法を実行できるのか、ということを考えます。

ここでは、「テニスで全国大会に出場した」という経験をしたと仮定します。次に考えるべきは、問題意識です。

部活中心の高校生活を過ごし、テニスを続けたいという気持ちの問題と、それを仕事にすると生活を維持できないという問題とのジレンマに陥った。

このような問題意識を持ったとしましょう。ここで、多くの人は、「スポーツはあくまで趣味でやればいい」などで解決してしまいます。しかし、それは本当の問題解決にはなっていません。なぜなら、本当に目指していることは、スポーツを仕事としても普通の会社員程度の生活ができるようなことだからです。趣味として諦めなくてすむ社会を作ることを考えてください。

これまでにも私と同じような気持ちになった人は大勢いるはずだ。私は、次の世代の人たちが同じ気持ちにならずにすむよう、マイナースポーツの人たちを応援する企画を立ち上げたい。その具体的な計画が『マイナースポーツチャンネル』というインターネット番組の制作だ。実際、将棋や麻雀などはインターネットテレビで多くの視聴者を獲得しており、スポーツでも同様のことは可能だろう。また、リアルでのイベントやスポーツ教室、物販なども行うことで、マイナーなスポーツ選手でも十分な生活ができる社会にしたい。

これでもまだ足りません。ここまでで書いていることは、それほど社会的に必要とされている問題ではないように見えます。社会的な意義がなければ、そこまで応援はされないでしょう。

この背景には、社会の多様性が失われようとしている現状への危機感もある。私が学生生活を通して感じてきたことは、経済が停滞するなかで安全な進路を選択することを迫る周囲の圧力であり、社会全体がさらに保守的になることで多くの選択肢を消してしまうことへの懸念である。「いい大学、いい会社」という選択肢しか見せられない社会は、身分や職業が固定された社会のそれと変わらない。私が解決したい問題は、この「社会の多様性の喪失」なのである。

ここからは、大学で何を学びたいのかを書きます。それがなければ、そもそも大学なんて行かずに、自分のやりたいことをやればいいだけですので。

この問題の解決のためには、実践知を重視する貴学で学ぶことが自分にとっての最適な環境だと考える。情報技術に優れた学生や、様々なスポーツに優れた学生、経営者を目指す学生が集まり、そのなかで実践的にメディアの活用や経営学を学ぶことができる。「スポーツビジネス」や「情報社会におけるソーシャル・プロデュース」をテーマとする研究会があり、早い時期から履修したいと考えている。こうして、大学の環境を最大限に活用し、知識や仲間を増やし、そして「社会の多様性」を実現していきたい。その目標の実現のために貴学を志望します。

どうでしょうか。このように、相手のことを知り、そして自分がいかに相性がいいのかを伝えてください。こうして入門編から完成編までの内容を踏まえて、納得のいく志望理由書を書き上げてみてください。