上海教育事情ブログ

上海で個別塾「上海個別塾(シャンコベ)」を運営しつつ、上海の日本人向け教育事情についていろいろと書いていきます。上海だけでなく、他の海外からの中学受験、高校受験、大学受験について、一般入試や帰国生入試に分けてリアルな状況をお話します。

高等部からの国立大学受験③(2018年度の振り返り)

遅くなってしまいました。ようやく落ち着きましたので、高等部からの国立大学受験シリーズを完成させます。今回を合わせて残り2回で完成します。

前回、前々回に引き続き、高等部生で実際に国立大学を受験した生徒さんに絞ってどのように受験をしたのかを詳しくお伝えしようと思います。まずはを読んでから、読んでもらえると参考になるかと思います!

 

⑤受験夏休み期

夏休み期間、日本に戻って予備校に行くべきかという相談を受けることがあります。(彼の場合、「そんなことするくらいなら自分でする」といって、相談はありませんでしたが。)高3の夏だけ行くことに対しての私の判断は、「人による」です。答えになっていませんので、大きく2つのタイプに分けます。

まず、ある程度過去問を解くことができる状態になっている人は、ぜひ予備校に行くべきです。予備校の良さは、単元ごとのパターン化のうまさや傾向分析の緻密さにあると思っています。つまり、「今年はこういった問題が出るかもね」とか「こういうところをよく問われる」という受験問題についての話がでてきます。その内容を理解して聞くレベルに達するためには、夏の時点ですでに過去問を解いたことがあり、自分に不足しているものが何かを整理できている必要があると思います。その段階に達していれば、今後の勉強の方針も立てやすくなり、得られるものは多いでしょう。

次に、過去問を解いたことがない、あるいは解いてもちんぷんかんぷんだという人は、予備校に行っても得るものは少ないでしょう。そういう状態で予備校の授業を受けたところで、ただただ聞き流すだけになりがちです。そもそも説明で出てくる言葉が理解できないなんてことが多々あります。「これは対称式になっているので…」「副詞的用法の結果用法の1つで…」などと言われたときに、それを「?」と思うようでは、内容が深く理解できません。それよりも、基礎力を徹底するためにも、自分で問題集を解き続けた方が理解できる量は多いでしょう。

さて、そんなことで彼は過去問も一度も解いたことがなかったので、上海に残ってみっちり古文と数学(センター)、化学基礎を教え、英語・世界史を自習することにしました。夏までに一通り英語を終えたこともあり、夏の英語は基本自分でやってもらいました。一方、夏前にやっていた数学の問題集が一通り済んできたので、センター過去問を繰り返しやってきてもらうことを宿題にしていました。授業では、数学の解説と国語の古文と理科基礎に全く手をつけていなかったので、ここでセンター対策として必要な分に絞って指導しました。同時進行で古典単語も覚えてもらいます。

世界史は、夏までに一周と言ってやってもらっていましたが、まだ一周終えていなかったので、夏休み中に一周に修正。(さらにその後、10月中に修正しました。)

こうして、夏の段階でセンターでは、数学と国語が6割、化学基礎が5~6割、英語が7割くらいまでとれるようになってきています。この時点では世界史や地理は5割くらいでした。だいたい他の科目も加えて、合計で900点中540点くらいになってきます。

ここからは、ペース配分が重要です。「あと全体で、160点伸ばすために英語を40点、数学20点、国語30点、世界史と地理も30点ずつ、理科基礎全体で10点あげること。英語は2次の勉強優先していれば自然に上がる。国語は12月入ってから対策する。あとは、苦手なところを覚えたり、得点源をつくるなどすること」として、科目ごとに目標にする点を本人の実力ベースで決めていきました。こうして具体的な数値目標を共有することができるようになってきます。

 

⑥受験夏休み明け~12月前半まで

この時期が一番伸びる時期です。社会や理科系の科目はここで一気に伸ばしてもらいます。ここで成績が伸びるかどうかは、夏休みが終わるに自分の現状をしっかりと把握したり、自分に合う勉強法を確立してきたかによります。

そして、国立で重要な英語や国語は2次対策に入ります。当初、首都大とは別の地方国立大学を目標としていたため、2次試験が国語と英語だけであり、そのために記述の練習や英作文の練習をしてもらいます。毎週英語と国語の過去問を1題ずつ12年分ほど取り組み、それぞれ添削しつつ問題傾向をつかんでもらいます。記述もすべて点数化し、合格最低点や平均点と比べてどうだったかを毎回話します。そうしていくうちに、自分の得点源や、他の受験生と差のつく問題、そして捨てる問題の見分けがつくようになってきます。

このように、過去問を解くうえで重要なことは、「傾向を知ること」はもちろんですが、「自分がとるべき問題と捨ててもいい問題の判断をすること」でもあります。そもそも満点で合格することを目指すと時間が足りません。赤本の解答に一言一句近づける必要もありません。重要なことは、「このレベルの問題を解かないと合格点に達さない」や「この問題は捨てても仕方がない」といった判断をできるようにすることです。ただ過去問をといて答え合わせをしている人が多いですが、大事なことは合格ラインにいかに乗るかです。

 

最初の時期は5割前後でしたが、慣れてきた12月頃には過去問で7割~8割の得点がとれるようになってきました。国語は不安定でしたが、英語の得点が安定して取れるので「英語で8割とれば、もし国語でこけて5割だとしても確実だ」ということを確認するようにしました。

 

つづく。