上海教育事情ブログ

上海で個別塾「上海個別塾(シャンコベ)」を運営しつつ、上海の日本人向け教育事情についていろいろと書いていきます。上海だけでなく、他の海外からの中学受験、高校受験、大学受験について、一般入試や帰国生入試に分けてリアルな状況をお話します。

2021年の夏期休暇で作文・小論文を指導しました

 ご無沙汰しております。コロナ禍の影響で自由に日本と行き来できないなか、夏休みは目いっぱいに予定が入っておりました。去年ほど時間的な余裕が取れなくなり、ブログ更新が滞ってしまってすいません。今後はなるべく長期休暇以外は月1~2回程度は更新をしていこうと考えております。去年の受験の反省や、今後に私がやっていきたい授業などいくつかご報告したいこともあります。また学習についての質問は個別に返信しておりますので、何かあればメールでご連絡下さい。費用は不要です。

 

 さて、ようやく今年の夏休みが終わって一段落つきました。日本人学校の生徒さんにとってはあっという間の休みでしたが、インター生や現地校生にとってはかなり長い期間でした。特に後者の子たちには、長期間の休みを利用してTOEFLや日本語の小論文などの対策を行い、各自がいくつかの小論文コンテストにも応募しました。今回はそのなかで指導していたときに起こった一つの場面をお伝えします。

 

 

1.「思考の補助線」を与える必要性

 作文や小論文で「何を書けばいいのかわからない」という質問をよく受けました。その質問をするとき、その生徒は自分自身へのアイデアの問いかけ方を間違っている場合があります。つまり、自分に対しても漠然と「何を書けばいいか」と聞いているから書くことが思い浮かばないということです。結論から言いますと、アイデアを引き出しやすくするには思考の補助線を引くことが効果的です。

 

 簡単な例から考えてみます。例えば、普段に「何か欲しいものある?」と聞かれたとき、常日頃欲しいものを考えている人は別として、多くの人はなかなか思いつかず、「特にない」と答えることが少なくないはずです。ですが、「何か欲しい文房具はある?」や「日本から取り寄せたいものはある?」と聞くと、何か1つや2つは思いついたりします。つまり、何かアイデアを引き出すためには何らかの観点を定めることで思いつきやすくすることができます。これを私は「思考の補助線」と呼んでいます。

 

2.実際の授業で起こったこと

 実際に最初の小論文の授業で私は「異文化理解における問題点は何か」と問いを与えました。ある子は「異文化を尊重するのが当たり前の世の中で、理解を押し付けられる」ように感じることが問題だと答えました。またある子は「異文化を理解できても実践ができない」という問題があると答えました。

 

 2人とも何とか答えを絞り出したのでしょう。興味深いのは、2人に共通点があることです。それは、「異文化を理解することが難しい」という着想ももちろんですが、「異文化理解の問題とは何か」について漠然とした質問のまま、漠然と答えを考えているところです。そうなると、結果的にぼやけた文章になってしまいがちです。

 

 より明快な小論文を書きたいのであれば、さらに自分で観点を絞ってみることです。異文化理解における「心理的な問題はないか」や「国際関係的な問題はないか」と考えてみます。そして、心理であればアンチバイアスの観点から「一時的な交流だけで理解したと思い込んでしまうこと」を問題と考えたり、国際関係であれば立場の非対称性の観点から「双方の関係が対等な立場ではないことが多く、一方的な理解になりやすいこと」を問題と考えたりすることできます。そのときも私の考えを伝えながら解答例を見せましたが、ここでまた改めて実際に書いてみます。

 

3.解答例

テーマ:異文化理解の問題点

 異文化理解とは、お互いの違いを認識しつつ尊重し合うという双方向的なコミュニケーションであるべきだろう。しかし多くの場合、異文化理解は一方的なコミュニケーションに陥りがちである。例えば、日本で働く外国人労働者に対して「日本に来ているのだから日本文化を理解すべき」という主張を聞いたことがある。そこには相手の立場を理解しようという想像力は見られない。実際に、私の知人は中国人として日本で働いているが、その子どもは日本語がほとんど話せないまま日本の学校に通っている。そして学校で「日本に来ているのだから日本語くらい話せるようになれよ」と言われ、困惑したそうだ。

 このような一方的な理解が求められる原因の1つに、異文化理解が往々にして非対称な立場で行われることが考えられる。つまり、異なる文化が存在するとき、多くの場合は移民などのマイノリティの場合のように、一方が明らかに弱い立場であるということが多い。そうすると、強い立場の側が一方的な理解を求めることになりやすい。このような立場の非対称性を解消するためには、より弱者に寄り添った視点を常に意識する必要があるだろう。(479字)

 

4.まとめ

いかがだったでしょうか。もし作文や小論文、英語のエッセイを書かなければいけないときに、1つのテクニックとして利用してみてください。次回は、12月頃(冬期休暇中)に実施しようと考えている高校生向けの「小論文+読書」の授業をご案内したいと思っています。