上海教育事情ブログ

上海で個別塾「上海個別塾(シャンコベ)」を運営しつつ、上海の日本人向け教育事情についていろいろと書いていきます。上海だけでなく、他の海外からの中学受験、高校受験、大学受験について、一般入試や帰国生入試に分けてリアルな状況をお話します。

2020年の日本人学校高等部についての所感。

 ご無沙汰しております。最近はかなり寒い日が続いていますので、皆さんも体調には十分にご注意ください。

 

 さて、今日はコロナで休校やオンライン学習が長かった今年の日本人学校高等部(中学部は別です)について、最近の様子についてちょっと思うことがあるので、個人的な意見ですが、ここでまとめていきたいと思います。

 

1. 日本人学校高等部の現状について思うこと

 高等部の現状に対しては少し心配しています。2020年度の国公立合格が1人、早慶上智の一般受験生もいなかったことを考えると、かなり一般受験や協力大以外の推薦入試での合格する生徒数が少なくなっています。ちなみに、国公立合格者も私の教え子で協力大の推薦を選ばず、AO入試で受かった子だったりします。その傾向は今年も続きそうです。

(参考:上海高等部進路実績 2020年度入試

 

 

 原因は2つあると考えています。1つ目は、協力大学の校内選考の時期の問題です。校内選考の時期が前期の成績処理が終わる高3の9月下旬にあるのですが、それまでに難関大学の推薦入試の結果が出ないことです。例えば、早稲田政経のグローバル入試や慶應SFCのAO入試、法学部のFIT入試などがそれにあたります。年度によっては、それらの推薦入試の結果を見てから協力大学に出すかを決めることができたのですが、最近はどれも(少なくとも校内の一次募集までには)間に合わなくなっていて、その結果、安全性を重視し、最初から協力大学を受ける子がほとんどになっています。今年は、コロナの影響で途中で受験に帰国することも難しいかったので、その傾向にさらに拍車がかかりそうです。

 

 2つ目は、高等部内で外部受験のノウハウが蓄積されていないことです。例えば、2018年度入試で早稲田国際教養の国内AOと、上智国際教養の公募推薦を受験した生徒さんを私の方で指導していたとき、当時の高等部にも英語のエッセイ指導をしてくれる先生が高等部にもいらっしゃいました。それで、その生徒さんは1つのエッセイを書くといつも私とその先生の2人からアドバイスを受けることができていました。そういう先生は普段から受験の話も授業でしますので、自然と「受験しよう!」という意識を生徒が持ったりするものです。しかしそのような先生が帰任され、新しい先生方は普段の授業でも受験云々の話をする先生はいないような印象です。

 

 結果的に、協力大学の推薦という限られたパイの中での競争に集中してしまい、学校の成績だけが全てになってしまうような状態です。しかも能力のある子ほどそれをいち早く理解して、成績を取るためにテスト勉強を必死にしたり、先生の印象を良くするために何か頼まれごとを進んで引き受けたりします。これだと、本来は上海という場所を活かした国際交流や言語学習などができるはずが、逆に成績には無関係なことだと消極的になってしまうという悪循環が起こります。この点を私は少し心配しています。

 

2. 能力がある子ほど、もっと一般や推薦入試を受けて欲しい

 今年はもうすでに推薦の子たちが終わっているでしょうから、来年度以降に大学受験する子たち、そして今から高等部を受けようとしている子たちに、少し伝えたいことがあります。それは、「能力がある子ほど、もっと一般や推薦入試を受験して、合格実績のパイを広げて欲しい」ということです。

 

 そもそもある程度能力のある子が、校内での成績を取ることだけを目的にした勉強をしていてもその子自身の学びや成長にはなかなか繋がらないでしょう。それはあくまで高等部にいるうちの評価でしかなく、卒業してしまったらその成績そのものに価値はないはずです。

 

 なので、英語や数学など何か得意科目があれば、「学校の成績なんてどうでもいい」と思って、一般受験の勉強をして欲しい。

 

 経済に興味があるのであればGDP統計を分析してみたり、ジャーナリズムに興味があれば同じニュースの報道の仕方を日中で比較してみたり、プログラミングに興味があればひたすらコードを書いてみたり、動画編集に興味があれば上海の美味しいお店や面白い観光スポットを集めてYoutubeに上げてみたり、そういうことに努力して推薦入試を受けてみて欲しい。

 

 それはどれも学校の成績とは無関係なことですが、自分にとっての財産になるはずです。