上海教育事情ブログ

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小論文テーマ①「共有地の悲劇」(思考の枠組み①)

「共有地の悲劇」について

今回はテーマに対して実際に答案を作成してみようかと思います。今回のテーマは前回のエントリーで簡単に紹介した「共有地の悲劇」です。まずテーマを読みましょう。

 

◆テーマ「共有地の悲劇」とは◆

ある共有地に牛を放牧して生活している人々を想像してください。この共有地は、そこを利用している人々に対して何らのルールもなく、自由に利用していい場所です。ただし、第三者に売り払うことだけはできません。そうした場合、次のことが想定されます。

①牛を一頭増やすことの利益は牛飼い個人で独り占めすることができる。

②それによって生じる共有地の荒廃という支払いは、その牛飼いが直接するものではない。間接的には、共有地の他の牛飼いたちと分け合うことになる。

となれば、合理的な牛飼いは、自分の利益を最大にしようとして、牛の数を出来る限り増やそうとする。共有地の資源が無限にあるのならば、それも問題にならない。しかし共有地のは資源は有限である。そして他の牛飼いたちも同様に自分の利益を最大にすることを考えるので、牛の数が共有地の許容量を超えてしまい、共有地の資源が枯渇するという悲劇的な結末となってしまう。

 

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以上が、「共有地の悲劇」の大まかな例です。放牧地がイメージしにくいのであれば、それを海にして、牛飼いではなく漁師として考えてもいいでしょう。あるいは、放牧地を地球と考えると、牛飼いたちは各国家なり各企業として読みかえることも可能です。

 

さて、以上の内容をもとに、答案の作成について考えてみます。

 

「共有地の悲劇」について、具体例をあげて論じる(1,000字)

ここから解答を作成してみます。小論文を書く際の論理展開は次のように考えます。

①共有地の悲劇とは何か?(テーマ理解)

②それに対する身近な例を上げる→何かしらのルールを決める必要性を指摘(具体例)

③解決策として自分の考えるルールをのべる(自分の考え)+まとめ

 

 

以下、順番に解答を作成する前にまとめます。

 

①共有地の悲劇とは何か(テーマ理解)

テーマが与えられる小論文の場合、まずはテーマをまとめることで、何が問題なのかの焦点を絞ることができます。ここで注意しておきたいことは、小論文を書く際のまとめは、国語の「要約」ではないということです。というのは、国語の要約は筆者の言いたいことを過不足無くまとめる作業であるのに対して、小論文のテーマのまとめは、自分が書きたい問題について焦点を絞っていくための作業です。ということで、ここでは自分が書きたい問題を絞りましょう。今回の場合、それは「合理的な考えで行動する個人が共有地を利用するとき、ルールがなければ、共有地の資源は荒廃してしまい、結果的に全員の不利益になってしまう」という問題点です。ここは、論理展開が間違わない程度にできるだけ短くまとめたいところです。

 

②それに対する例(具体例)

「合理的な考えで行動する個人が共有地を利用するとき、ルールがなければ、共有地の資源は荒廃してしまい、結果的に全員の不利益になってしまう」という問題を抱えた身近な例とは何かを考えます。すぐに思いつくのは環境問題のような問題だと思いますが、ここではあえて違うものを考えたいと思います。ここでは「テレビの報道」について考えたいと思います。

 

テレビの報道において、どんな事件をどれだけ報道するかについての明確なルールはない。事実、各テレビ局は自分たちの利益のもととなる視聴率をとるために、なるべく話題性の高い事件を中心に報道している。しかし、限られた放送時間内で放送できる内容も少なく、結果的に視聴者は同じようなニュースしか見ることができなくなる。また、視聴者を楽しませるために取材が過熱しすぎ、最悪の場合、ねつ造や誤報が生じてしまう。このような事態が行き過ぎると、テレビ自体の信頼性が失われ、メディアとしての機能を喪失してしまうことになりかねないだろう。

 

という例を考えてみました。少し無理やりテーマに合わせた感もありますが、高校生が書く小論文であれば、テーマから逸れずに出来る限り他の受験生と被らない内容を考えることも大事です。何より大事なのは、「合理的な考えで行動する個人が共有地を利用するとき、ルールがなければ、共有地の資源は荒廃してしまい、結果的に全員の不利益になってしまう」というまとめに合致していることです。

 

③解決策を考える

この後、上で具体的に提示した問題に対する解決策を考えます。ここが特に他の人と差がつくところです。ここでいかに論理性と現実性の高いアイデアを提案できるかです。論理性が高くても現実性が低いアイデアであればそれは提案としては不十分です。つまり、最後は論理性に加えて、説得力をもたせるための書き方が必要になります。例えば、こんな解決策はどうでしょうか。

 

【解決策1】

このような利益を上げるための行き過ぎた報道を防ぐためには、一定のルールが必要である。そこで、利益重視ではなく視聴者にとって価値のある情報を重視して流すようにテレビの報道を法律を作るべきだ。

 

【解決策1の欠点】

この解決策を提案してしまうことは大きな減点につながるでしょう。というのは、メディアへの規制を「法律」によって行うことは、政府がメディアを規制することであり、それは「報道の自由」の問題となってしまうからです。ということで、今回の例の場合、ルールを作る主体は政府でない方がいいでしょう。

 

【解決策2】

このような利益を上げるための行き過ぎた報道を防ぐためには、一定のルールが必要である。そこで、メディア同士で話し合って自主的なルールを作るべきだ。そうして報道におけるルールを、政府に頼る形ではなく、自分たちで作ることによってもメディアの力を維持できるはずである。

 

【解決策2の欠点】

この解決策の場合、残念なのはすでにこうした自助努力というのは各メディアが行っているという点です。放送倫理番組向上機構(BPO)という名前を目にしたことくらいはあるかと思います。少なくとも何かしら自分たちでの努力はしていると考えた方がいいでしょう。現状以上の解決策を考えたいものです。

 

以上のように、解決策1や2を考えてみてわかることは、解決策を考えるときに大事なのは、その解決策が「何か大原則を壊さないか」や「すでに行っていて、それでは十分に解決しないことではないか」といった検証を忘れないということです。さらにそのためには、その分野に対するある程度の知識も必要です。それをふまえた上でさらに解決策を考えてみましょう。

 

【解決策3】

このような利益を上げるための行き過ぎた報道を防ぐためには、一定のルールが必要である。重要なのはそれを誰が担うかである。国が規制することは「報道の自由」に反する。企業主体の報道倫理はすでに存在するが十分とは言えない。そこで私は、視聴者にとってより価値のある情報を流すことができる仕組みとして、報道を行うすべてのジャーナリストたちが所属できるような「ジャーナリスト組合」を作るべきだと考える。ジャーナリスト個人がそうして力をもつことで、メディアの企業としての利益だけでなく、彼らの倫理によってメディアの報道を規制できるはずである。

以上のように、共有地の悲劇はその共有地の状況に応じたルールを定めることで回避することはできると考える。

 

というようなものです。最後、解答例をまとめてみましょう。

解答例

 共有地の悲劇とは、「合理的な考えで行動する個人が共有地を利用するとき、ルールがなければ、共有地の資源は荒廃してしまい、結果的に全員の不利益になってしまう」という内容である。このような共有地の悲劇は、今日の環境問題や資源の問題などにも援用でき、その解決策を考えることは極めて重要である。

 ところで、この共有地の悲劇の具体例として最初に思い浮かぶのは「テレビの報道」だ。テレビの報道において、どんな事件をどれだけ報道するかの明確なルールはない。事実、各テレビ局は報道倫理もあるが、それよりも自分たちの利益のもととなる視聴率を優先して、なるべく話題性の高い事件を中心に報道しているように見える。そうなると、限られた放送時間内で放送できる内容も少なく、結果的に視聴者は同じようなニュースしか見ることができなくなる。また、視聴者を楽しませるために取材が過熱しすぎ、最悪の場合、ねつ造や誤報が生じてしまう。実際に、地下鉄サリン事件の際に誤報が起こったことは有名だ。このような事態が行き過ぎると、テレビ自体の信頼性が失われ、メディアとしての機能を喪失してしまうことになりかねないだろう。こうした状況を考えるとき、「テレビの報道」も一種の共有地として捉えることができる。

 このような利益を上げるための行き過ぎた報道を防ぐためには、一定のルールを設けることが必要であるだろう。重要なのはそれを誰が担うかである。国が規制することは「報道の自由」に反する。企業主体の報道倫理はすでに存在するが十分とは言えない。そこで私は、視聴者にとってより価値のある情報を流すことができる仕組みとして、報道を行うすべてのジャーナリストたちが所属できるような「ジャーナリスト組合」を作るべきだと考える。ジャーナリスト個人が力をもつことで、メディアの企業としての利益だけでなく、彼らの倫理によってメディアの報道を規制できるはずである。

 以上のように、共有地の悲劇を防ぐためには何らかのルールを設けることが必要だと考えられるが、さらに重要なことは、共有地を利用している主体がどのような性質を有しているのかに着目し、それに応じたルールを定めることであると考える。

(原稿用紙で952字)