上海教育事情ブログ

上海の日本人向け教育事情についていろいろと書いていきます。学校、塾、語学教室、文化教室、スポーツ教室など。

(2017年度)日本人学校高等部の受験結果についての感想

ブログの更新がまたまた滞っておりました。。。夏休み明け、いくつかの告知を行うと思いますが、その準備をしておりました。

 

今日は、今さら感はあるのですが、ここで昨年度の高等部の受験の結果について分析と、私の個人的意見をお伝えできればと思います。

 

①日本人学校高等部って進路実績いいの?

まずまず、「良い」と思います。良い結果を出している理由としては、他の高校の先生方、教育機関の方と比べても遜色ないどころか、高等部の先生方はそれ以上に頑張っていることにあると思います。高等部の先生は、生徒が少ないということもあり、1人1人に対して結果を出すことに強い責任をもっているのは間違いありません。この点、生徒にとっては、日本の大部分の高校よりも恵まれた環境だと思います。

 

もちろん物足りない点はあります。一般受験、特に国立大学を目指したい生徒にとっては、学校の行事や授業の多くが妨げになっているのも確かです。ただし去年は、2期生以来となる、AOや公募ではなく一般受験で国立大学に現役で合格者を出していました。加えて、私立で慶應義塾大学にも実質2人の一般受験での合格も出しており、予想していた以上に頑張ったと思います。

 

大まかな基準でしかありませんが、偏差値50台の高校に進学するよりは良い進学が期待できるのではないでしょうか。

 

②個人的な想い

というわけで、去年の進学実績は全体的には良かったと思います。しかし、もっと詳しく中身を見ていくと、個人的にはもう少し頑張ってほしいところもあります。

 

まず、去年の一般受験をした多くの子が編入生たちであったということ。それは、編入生だと日本の高校での成績が低く、高等部の良い大学の推薦枠に入れないということもあるでしょう。

 

一方、最初から高等部に入る多くの生徒は「推薦ありき」で高等部に進学しているように思います。つまり、一般受験などは最初から考えず、推薦のために定期テストで高得点を目指している子たちが多いです。

 

それは生徒一人一人にとってはとても合理的な判断であり、それ自体が間違っているなんて全く思いません。ただ、そういう子たちが多いことで、学校全体の雰囲気がどうしても保守的になっています。陰では学校や先生に不満は言うけど、先生の評価を気にして命令されたことは従う。そんな矛盾した雰囲気が作られていているように思います。

 

そういう高等部を外から見ていて、個人的に思うことは、「生徒たちよ、もっと高等部を活性化させてくれ」ということです。高等部がもっと良くなる鍵は、先生でもなく、上海という環境でもなく、高等部に通う生徒1人1人がもっと強くなることだと思っています。

 

何が活性化なんだ?と思う方もいると思います。文化祭や演劇祭などのイベントが盛り上がればいいのか、進路実績がもっと良くなればいいのか。それらも要素の1つ1つではありますが、私が思うのは、高校生活のなかで感動できることを見つけられることだと思っています。まずは、その対象は何でもいいと思います。ただし、時間と労力をかけて熱中できるものが必要です。今の高等部には何かに熱中して努力している学生が圧倒的に少ない。

 

③私ができること

受験でもいいですし、部活でもいいですし、外部での活動でもいいと思います。何か熱中できることを探して欲しいな、と。

 

私がこうして言っていることは、傍観者の戯言であることは重々承知しています。ただ、間接的にでも上海で教育関係に携わっているなかで、高等部に進学する生徒たち、その保護者の方々がもし、このブログに出会い、一人でも多くそういう視点をどこかで持ってもらえたら、高等部がもっと良い学校になる気がするんです。

 

国立大学・難関私立大学等に進学したいという希望があれば、そのサポートを致します。AO入試や帰国生入試の情報が知りたいということであれば、私のわかる範囲でお伝えします。何か、「頑張りたい」と思っている子がいれば、私も微力ながら応援したいなと思っています。

 

 

以上、今年の高3生たちを見ていて思うところがあったので、こうして書かせていただきました。

帰国子女受験の動向(2017年度)

さて、今年度の帰国子女受験(海外出願)の結果が出始めたので、私の方で感じている傾向についてお伝えできればと思います。今回は帰国生の大学受験のなかでも、特に「海外出願」についての感想です。2月14日に上智大学国際教養学部、23日にICUの結果が出ましたね。それについての所感をお伝えさせていただきます。

また、その他のインター生の帰国生入試、今年の高等部の一般受験の話、また帰国生の高校受験についてはまた次回以降に更新いたします。

◆帰国生(海外出願)の大学受験の全体的な傾向について

今年の結果を全体的に見ていますと、受験生の中で「学校の成績が高い生徒さんほどいい結果が出ている」ように思います。書類審査において、数年ほど前までは多くの私立大学について高校時代の成績はあまり重視しない傾向だと言われていました。もちろん、国立大学受験については以前から高校の成績重視と言われてました。しかし、上智、ICUなど私立大学は書類においてもSATやTOEFL等のスコアをある程度揃えさえすれば確実に通っていました。そうして私立大学受験ついてはあまり学校の成績はみないということで、学校の成績が足りない子にとって、高校在学中に出願もできるということで、最初の出願先として人気がありました。

しかし、今年については「スコアだけ見られているなら、例年なら受かるのにな」と思う子でも今年は残念な結果になったケースがあるということです。一方で例年通り合格を手にしている子もいます。その差を考えてみたときに、成績でGPAで3.5、IBでは37以上など、普段の成績が高い子ほど合格を手にしている様に思う、ということでした。

さて、そのことからインターへの進学を考えらえている保護者の方には少しのアドバイスがあります。それは、早い段階から成績をとることをお子さんに意識づけることです。「インターからなら良い大学に行きやすい」と思われている保護者の方も少なからずいらっしゃいます。そしてとりあえず、TOEFLのスコアだけでもあげなきゃと必死になってTOEFLの塾に通わせるなどをされていたりします。

しかし、近年帰国生受験について対策等もかなり充実したからでしょうか。また、アジア(特に中国)の学生の書類のレベルも年々高くなっています。それによって、書類に対する要求が徐々にインフレしているように思います。スコアを取るのも当たりまえ、それだけでなく成績や他の資格や賞などをしっかりと取ることも必要条件になりつつあるように思います。つまり、「帰国生の大学受験も、思っている以上に大変」ということです。

◆日本帰国後の帰国生入試はこれから判断

先の傾向としてお伝えしたのはあくまで上智、ICU、早稲田等の9月入学を書類審査のみで出願する場合の傾向です。早稲田の結果もまだ出ていませんので、それについても追って私個人の所感は述べさせていただきます。

ただ、もう一つ言えることは、「6月の卒業後日本に帰国して受験をする場合はやはり私立大学はあまり高校の成績を見ていないところが多い」ということです。本格的な帰国生受験は、実際には卒業後に日本に帰国してから始まります。去年のその結果を総合して考えてみると、日本に帰国後はあまり成績までは見られておらず、むしろ面接や小論文の方を重視されているように見えます。

つまり、かなり大雑把な言い方になりますが、学校の成績がとれているのであれば高校在学中に海外出願での合格を目指すことができ、成績があまり取れていないということであれば、日本に帰国後に帰国生受験をして合格を目指すのが中心にはなるかと思います。

早めに合格を得て安心したいということであれば、それだけ早いうちから意識して準備することが必要になるということですね。

よくよく考えてみますと、それって高等部のお子さんも同じなんですね。一般受験を目指すお子さんはその限りではありませんが、推薦を狙っているお子さんにとって成績がとれているお子さんは高校在学中に協力大学の推薦を取って大学を決めることができる一方、成績があまりとれていなければみんなの合格が決まった後で、いろいろと推薦を出していかないといけなくなる。

「推薦で良いところを目指したい」のであれば、それだけ早い段階での準備とそのためのお子さんとのコミュニケーションをとるようにしてください。

 

次回は、今の高等部3年生たちと話す機会が近々ありそうですので、高等部の受験の結果についてまとめたいと思います。

上海で英語系の資格を取りたい方

また更新がかなり滞ってしまいましたが、ようやく落ち着きましたのでまた更新したいかと思います。

さて、今までは上海日本人学校や上海の塾、インターナショナルスクールあるいは現地校などのご紹介だけをさせていただきました。今回は、上海で英語資格関係を取るための準備や方法について少しお話しさせていただければと思います。

◆もともとはアンチ資格派

私自身は、もともとアンチ資格派です。英検やTOEICがいろんなところで評価されいますが、その大切さを語る人に会うと、「本心で話しているのかな」と思うことがしばしばあります。特に、相手の立場や状況を考えずに、ただ資格の重要性だけを説くような人は、自分の英語力をただ自慢したいだけか、もしくは単なるポジショントークでないかと感じるものです。

これは、実際に英語資格(もしくは、他のどんな資格でも)を取得した人ならば共通認識だと思うのですが、資格って結局は実力に直結するものではないですよね。あくまでもそうした力を基礎として、どのレベルでどれだけの量の経験を積むかで本当の実力が決まるはずです。

ただ、どうしても時代の流れというのはただ資格の大切さを語る人に対して味方をするようです。英語の試験は、センター試験をなくし、外部試験利用に変化しそうですし、結局いろんなところで資格の点数を求められていますよね。そうした流れに逆らうのも、また自分をただただ不利な立場に追いやるだけです。そこで、どうやって資格勉強をするべきなのか、まとめてみました。

◆まずは、自分のレベルをしっかりと把握して、何を受けるか決めよう

まずは、どんなレベルの資格を受けるのかを明確にしましょう。自分の実力に合わないあまりにも無謀な受験は、多くの場合は失敗に終わります。

実際に今年出会った中学1年生のお子さんを持つ方の例をご紹介します。上海日本人学校には英語圏から来た子や、小さいころから英語を習っている子も多く、日本の小学校から上海に来たときにそのレベルの高さに驚かれたそうです。そこでお母さんが焦ってしまい、急に中1のお子さんに「3級くらいは受からないと」などと話してしまい、子どもは子どもで「今までそんなこと言われなかったのに、何を急に言い出すんだろう」とギャップができ、それがお子さんのモチベーションの低下になっていました。

そもそも、そのお子さんは英語があまり得意ではなく、例えばHe likes soccer.を疑問文にするとき、Is he likes soccer?としてしまうような子でした。「疑問文といえば、heならIs he~?」と深く考えずに捉えているんですね。そこで、まずは「周りは気にせず、まずは5級から取っていけばいい」というアドバイスをいたしました。それを通して中1の英語力をしっかりと総復習させておく必要があったからです。

5級や4級は意味がないと思われるかもしれませんが、それはお子様のレベルによります。中1でもしっかりと学校内容が理解できている子であれば中1で4級を目指していいでしょう。塾などで先に文法などを進めている子であれば中1で3級を目指してもいいでしょう。英語に興味があって、しっかりと対策をした上で受験する意思があるならば、準2級以上を受けさせてもいいでしょう。ただ、お子さんに「とりあえず英検取りなさい」などと押し付けるのではなく、しっかりとやる気や実力に合ったレベルを受験するようにするべきでしょう。

◆上海で英語資格の対策を始めようかと

さて、そうしたお子さんのレベルをしっかりと把握し、長期的な実力を育るような対策までしてくれるような場所はないのかと探しておりました。私の知る限りの保護者の方々にも聞いておりましたが、なかなかそうした先生はいらっしゃらず、とりあえず「何もしないよりは」と、塾の講習や家庭教師の先生にお願いしているという状況ばかり聞きます。

そこで、私自身が来年度から正式に英語資格のための教室を開こうかと思っております。目指すは、「レベルに見合う2カ月資格対策」です。「とにかく合格すればいい」のではなく、「本当に資格レベルにあった実力を養い、英語に対する自信を持てるようにする」ための対策です。

来年度から正式にスタートさせようと思っております。

※無料モニターの募集をさせていただいておりましたが、本日で一旦締め切らせていただきます。応募していただいた方でモニターを実施し、また報告もさせていただきます。その他ご質問等ありましたら以下のメールアドレスにご連絡下さい。

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志望理由書添削の限界

1. 添削サービスでできること、できないこと

学校や塾の先生に志望理由書を添削してもらっている生徒さんは多いと思います。また、インターネット上でも様々な志望理由書添削サービスがあります。こうしたものを利用して、自分の志望理由書を改善するはずです。そこで注意が必要です。

それは、添削では文章の中身は大きく変えられないということです。添削が早い先生なら、1時間以内であなたの志望理由書を添削してくれるでしょう。また、インターネット上のサービスも安価で丁寧に添削をしてくれるように見えます。

しかし、それは添削に慣れている人たちの「型」に合わせて修正しているだけに過ぎません。すでにお伝えしたように、ある程度の型はあります。それはそれで大事ですが、もっと大事なことは、あなたが出願する大学との相性がどういいのかをしっかりと考えて、出願先にしっかりと伝えることです。そのためには、「自分で考えて書く中身」が何よりも大切です。それは添削程度では改善しません。

まとめると、「添削」とは、あなたがすでに考え抜いたことを、より効果的に伝えるための型に当てはめる修正作業です。もちろん、論理構成や誤字脱字は修正できます。しかし、中身を変えることはできません。ですから、「とりあえず添削してもらえばいい」というのは大きな間違いであると理解してください。

2. 志望理由を考え抜くことが苦手な人へ

では、「志望理由なんて思いつかない」、「言われたから書かないといけないだけ」など、そもそも考えることが苦手な場合はどうでしょうか。そういう場合に必要になるのは、「インタビュー」です。

まず「志望理由が思いつかない」という人の多くは、「別に自分に特別な能力なんてない」と思っています。アピールできるものがないと考えてしまうわけです。

みなさんは、知らず知らずにいろんな経験をしています。そして、その都度、いろんな判断をしています。それがあなたの「やりたいこと」や「やりたくないこと」であり、それを丁寧に整理していくことで、「自分が本当にやりたいこと」の方向性が見えてきます。

例えば、「家族で食事に行くときは、必ず自分が注文する」とか「いつも同じグループでいるよりは、新しい人との出会いを求める」とか、日常生活であなたの意思で選んでいることが何かしらあるはずです。そういう選択の結果こそ、やりたいことに結び付く自分自身の判断です。

それを整理するには、インタビューが効果的です。自分では当たり前だと思っていても、それを相手に伝えることで、「それは普通の人よりも効率的な学習ができている」とか「他の人よりも努力している」などの内容が整理できます。

3. 志望理由書は自慢話ではなく、人間性をアピールするところ

多くの人は、志望理由書を「○○検定何級」とか、「△△コンクール金賞」とかばかり書こうとします。しかし、読み手側が欲しい情報とは、そういう自慢ばかりではなく、そうした能力を獲得するために、どんな努力をしたのか、何を考えたのか、そして今後にどう繋げたいのか、というその人の人間性の部分です。それが欠けてしまうと、ただの自慢話で終わってしまいます。

逆に言えば、志望理由そのものは、そのような立派な資格や受賞歴などがなくても十分なのです。大事なことは、今までの経験の中で特に感じたことや考えたことをできるだけ丁寧に分析し、そして将来どんなことに活かせるのかを考えることです。

それが苦手だという人は、まずインタビューしながら、自分がどんな人間なのかを整理することを手伝ってもらってください。

志望理由書の書き方(完成編)

前回、志望理由書の書き方(発展編)を書きました。前回の内容は、大学や企業でしたいこと(近未来の目標)についての書き方でした。そこで大事なのは、自分の得意なことや相手の求める人物像に合わせて「will」「must」「can」の割合を適切に配分することでした。

さて、いよいよ志望理由書の書き方について、最後の内容となります。最後にお伝えしたいことは、「相手の調べ方」です。つまり、相手が何をしているのか、どんな人物を求めているのか、あるいは自分がやりたいことをそこで本当にできるのか、などの詳しいことを調べることです。これは非常に大切なことです。

多くの人は相手を調べる作業が面倒だと思い、軽視しがちです。しかし、受験や就職活動は「お見合いと同じ」と言われるくらい、本当にお互いがいい関係を作れるのかを真剣に考えないといけません。大学であれば4年間以上、会社であればもっと多くの時間を過ごす可能性が高く、自分の人生の大部分の時間を費やすことになるわけですから、それは本当に大きな決断であることを認識しておく必要があるわけです。

恋愛の相手や結婚相手を考えるのと同じように、妥協せず、真剣に考えてください。今回はその方法として、大学の調べ方をできる限り詳しく説明したいと思います。

1. 大学のことを調べる手順

まず、何から調べればいいのかわからない人が多いかもしれません。思いつくことといえば、①ホームページ、②大学のパンフレット、③先輩などの話、④説明会、⑤その他の情報サイト、などになるかと思います。さて、どのように調べるのがいいのでしょうか。

1-1. まずは、ホームページとパンフレット

最初にしてほしいことは、ホームページとパンフレットの精読です。特に、「求める人物像」「アドミッションポリシー」などの内容です。例えば、慶應義塾大学総合政策学部のアドミッションポリシーには次のようなことが書いています。

総合政策学部は「実践知」を理念とし、「問題発見・解決」に拘る学生を求めます。問題を発見・分析し、解決の処方箋を作り実行するプロセスを主体的に体験し、社会で現実問題の解決に活躍する事を期待します。従って入学試験の重要な判定基準は、自主的な思考力、発想力、構想力、実行力の有無です。「SFCでこんな事に取り組み学びたい」という問題意識に基づいて、自らの手で未来を拓く力を磨く意欲ある学生を求めます。

これをただ「問題発見・解決ができる人を求めている」とだけ理解して終わるのではなく、精読してください。「実践知」とは何か、「『問題発見・解決』に拘る」の「拘る」という言葉、「主体的に」「自主的な」「自らの手で」といった言葉、などに注目してください。そして理解しようとする中でわかることは、慶應義塾大学総合政策学部の求める人物像とは、「通常の問題意識ではなく、他の人が不可能だと思っているような問題について徹底的に考え、解決しようとする強い意思と実行力を持つ人」であるということです。このように、もう少し具体的な人物像をイメージできるまで精読してください。

1-2. 実際にどんなことを学べるのかをリサーチする

さらに、その大学でどんなことが学べるのかも具体的にリサーチして下さい。これには、ホームページやパンフレット、オープンキャンパスなどよりもずっといい方法があります。それは、気になる教授の書いた本や論文を読むことです。ホームページなどの情報ではほとんど見えてこない授業で学べる中身を知ることができます。

そもそも多くの大学の先生方は、大学の授業で教えていることと専門書に書いたことがほとんど同じであることが少なくありません。同じ人間がしていることですから、当然といえば当然ですが。ということで、本なり論文なりを読むことで大学で学べることの具体的な内容を知ることができます。

手当たり次第に本を買うわけにもいかないと思ったときには、気になる教授名の後にスペースを入れてPDFというワードを加えて検索してみましょう。例えば、先のSFCの國領二郎教授に興味があるとします。そのときは「國領二郎 PDF」と検索してみるわけです。そうすると、教授の書いた論文や記事が中心に出てくるようになります。そうして何人かの先生に目星をつけて専門書を買うといいでしょう。

さらに質問があればファンレターとして手紙を書いて出版社に送ることだって可能ですよ。

1-3. 「先輩に聞く」はおまけ程度

そうした本や論文を読むことなく、その大学にいる先輩に聞くといったことだけをする人もいます。正直、これは得策ではありません。あくまで追加情報程度であり、それを全面に信用してはいけません。

というのは、大学とはいろんな切り口で見ることができる場所です。例えば、「先輩」にとっては「勉強が厳しい」と思ったとしても、他の人からすると「専門が深く学べて楽しい」かもしれませんし、「楽な授業ばかり」と思うかもしれません。ただ数人の先輩がいるからといって、それで大学全体のイメージを作ってしまうのは良くないですよね。

ですので、「先輩に聞く」はあくまで参考情報程度にしかならないと理解していてください。そもそも、学年が変われば周りにいる学生も変わります。そうして少しずつ変化していくものです。

2. 自分が相手に合うことを伝える

以上の方法で相手の求める具体的な人物像ができたら、次に重要になるのが「自分といかに相性がいいか」ということです。例えば、先ほどの慶應義塾大学総合政策学部の場合は、「通常の問題意識ではなく、他の人が不可能だと思っているような問題について徹底的に考え、解決しようとする強い意思と実行力を持つ人」が求められているということを理解しました。次に、自分がいかにその素養があるかを考えてください。ここでは、実際に慶應義塾大学総合政策学部に出すことを想定して書いてみます。

例えば、「スポーツで全国大会に出場した」や「世界レベルのコンクールで入賞した」という実績をアピールしたところでまだまだ相手の人物像には合いません。それからどんな問題意識を持ったのか、そして、どんな解決方法を実行できるのか、ということを考えます。

ここでは、「テニスで全国大会に出場した」という経験をしたと仮定します。次に考えるべきは、問題意識です。

部活中心の高校生活を過ごし、テニスを続けたいという気持ちの問題と、それを仕事にすると生活を維持できないという問題とのジレンマに陥った。

このような問題意識を持ったとしましょう。ここで、多くの人は、「スポーツはあくまで趣味でやればいい」などで解決してしまいます。しかし、それは本当の問題解決にはなっていません。なぜなら、本当に目指していることは、スポーツを仕事としても普通の会社員程度の生活ができるようなことだからです。趣味として諦めなくてすむ社会を作ることを考えてください。

これまでにも私と同じような気持ちになった人は大勢いるはずだ。私は、次の世代の人たちが同じ気持ちにならずにすむよう、マイナースポーツの人たちを応援する企画を立ち上げたい。その具体的な計画が『マイナースポーツチャンネル』というインターネット番組の制作だ。実際、将棋や麻雀などはインターネットテレビで多くの視聴者を獲得しており、スポーツでも同様のことは可能だろう。また、リアルでのイベントやスポーツ教室、物販なども行うことで、マイナーなスポーツ選手でも十分な生活ができる社会にしたい。

これでもまだ足りません。ここまでで書いていることは、それほど社会的に必要とされている問題ではないように見えます。社会的な意義がなければ、そこまで応援はされないでしょう。

この背景には、社会の多様性が失われようとしている現状への危機感もある。私が学生生活を通して感じてきたことは、経済が停滞するなかで安全な進路を選択することを迫る周囲の圧力であり、社会全体がさらに保守的になることで多くの選択肢を消してしまうことへの懸念である。「いい大学、いい会社」という選択肢しか見せられない社会は、身分や職業が固定された社会のそれと変わらない。私が解決したい問題は、この「社会の多様性の喪失」なのである。

ここからは、大学で何を学びたいのかを書きます。それがなければ、そもそも大学なんて行かずに、自分のやりたいことをやればいいだけですので。

この問題の解決のためには、実践知を重視する貴学で学ぶことが自分にとっての最適な環境だと考える。情報技術に優れた学生や、様々なスポーツに優れた学生、経営者を目指す学生が集まり、そのなかで実践的にメディアの活用や経営学を学ぶことができる。「スポーツビジネス」や「情報社会におけるソーシャル・プロデュース」をテーマとする研究会があり、早い時期から履修したいと考えている。こうして、大学の環境を最大限に活用し、知識や仲間を増やし、そして「社会の多様性」を実現していきたい。その目標の実現のために貴学を志望します。

どうでしょうか。このように、相手のことを知り、そして自分がいかに相性がいいのかを伝えてください。こうして入門編から完成編までの内容を踏まえて、納得のいく志望理由書を書き上げてみてください。

志望理由書の書き方(発展編)

前回、志望理由書の書き方(標準編 後半)を書きました。これまでの内容をまとめておきましょう。

これまで、

  1. 入門編:志望理由書を書くときの心構え

  2. 基礎編:志望理由書を書く流れ

  3. 標準編 前半:志望理由書の中心となる『自分の経験』の増やし方

  4. 標準編 後半:志望理由書の中心となる『自分の経験』の書き方」

とお伝えしてきました。ここまでしっかりと書くことができれば、他に何が重要になるかというと、それは「大学(or 企業)で何がしたいのか」という「近未来について」の内容です。発展編では、「近未来」の内容の書き方についてお話したいと思います。

1. 「will」「must」「can」が一致すること

近未来でやりたいことを書く上で、最も大事なことは「will(意思)」「must(義務)」「can(可能)」が一致することです。このうちのどれか一つが欠けても説得力が欠けてしまいます。

例えば、次のような内容を書いたとします。

私は都市開発の勉強をしたい。特に、オリンピックや万博などの国際イベントを基にした都市開発には疑問があり、より効果のある都市開発を研究することに大きな意義がある。

ここには、「都市開発を勉強したい」という「will」と「研究に意義がある」という「must」はあります。しかし、それをあなたができるのかという「can」がわかりません。もちろん、自分の経験ですでに「can」を伝えられている場合はそれで大丈夫です。しかし、もし明確な「can」が示せていないならば、自分にそれができるという根拠を示しましょう。それを踏まえて、上の文章を直すと次のようになります。

私は都市開発の勉強をしたい。特に、オリンピックや万博などの国際イベントを基にした都市開発には疑問がある。私自身が高校3年間を通して市役所の町おこしにボランティアで携わってきたため、都市開発の難しさは理解できる。だからこそ、より効果のある都市開発を研究することに大きな意義がある。

先ほどの文に一文だけ加えましたが、それでも受ける印象は大きく違うはずです。こうして、自分が近未来でやりたいことには「will」「must」「can」を一致させることを意識してください。

2. 「will」:「must」:「can」の割合を考える

さて、「will」「must」「can」を一致させることは重要ですが、それにしても人によってその割合は違ってきます。例えば、経験豊富ですでに何かの実績を残しているような人であれば「will」:「must」:「can」=2:3:5くらいにする、などの比率を考えることです。以下、3つのパターンに分けておきましょう。

  1. 将来性重視パターン
    「will」:「must」:「can」=5:3:2
    経験や知識が不足している人はこのパターンを考えてみましょう。将来的な可能性をできるだけ明確かつ詳細に書くことに大半を割きます。ただし、関連する見識や知識をつけておくために、関連することに取り組んでいる人へのインタビューや専門書を3冊以上読むことなどで現実性を補うようにしましょう。

  2. 経験重視パターン
    「will」:「must」:「can」=2:3:5
    自分の経験や実績に自信がある人はこのパターンを考えてみましょう。有名な大会やコンクールで賞を取っていたり、誰にも負けないと思うような経験をしてきた人はそのことを書くのに大半を割きます。その際、相手に伝えるべきことに絞って書くことを忘れずに。

  3. 社会性重視パターン
    「will」:「must」:「can」=3:5:2
    比較的基礎学力が高い人はこのパターンが使えます。高校の平均評定が4.5以上の人や、有名大学に在籍する人などは説得力が増します。その場合は、自分のできることやしたいことだけでなく、問題の重要性と解決の意義やそのメリットを論理的に説明することに大半を割きます。もちろんその問題に自分が取り組みたいという意思も必要条件です。

以上のように、「will」「must」「can」の割合を考えることは極めて重要です。また、相手が求めている人物像も調べて、何に比重を充てるかということも考えましょう。例えば、慶應義塾大学総合政策学部や環境情報学部のAO入試では、A方式は「将来性重視」、B方式は「社会性重視」、C方式は「経験重視」であると思われます。あるいは、慶應義塾大学法学部のFIT入試は「社会性重視」に近いように思います。自分が出願するところに合わせて、しっかりと配分を決めて書くようにしましょう。

3. 「大学で学びたいこと」書き方の例

それでは実際に「大学で学びたいこと」について書いてみます。今回は、「将来性重視パターン」で書いてみようと思います。

私は将来、日本とASEANとの外交で中心的な役割を担いたいと考えている。これまでの日本のアジア外交は、自動車を核とする製造拠点や販路の確保が優先事項となっており、そのカードを相手から引き出すための交渉であったように見える。しかし、市場環境の変化によって、今後日本で重視すべきなのは自動車産業に代わる新たな産業の育成であり、そのために有利な条件を引き出すための外交でもあると考える。私自身、タイで5年間を過ごし、日本のゲームや玩具、アニメなどのソフトの人気や質の高さを目の当たりにしてきた。現地のコスプレ大会にも毎年参加し、そこで年々の市場規模の拡大も感じてきた。そうしたコンテンツの海外発信を単に各企業努力に任せるだけでなく、国としても支えていくことができれば、日本を支える大きな産業となるだけでなく、歴史問題を抱えるアジア諸国との関係を改善する上でも役立つだろう。
以上のことを実現するためには、より深く日本のコンテンツ産業を理解しなければならない。また、現地に根付く産業を育てるためには、現地の文化や法律も熟知しなければならない。何より、外交のための交渉術やルールも学ぶ必要がある。これらを学ぶ上で貴学は最適な環境であると考える。○○教授のもとで外交政策を学ぶことができ、△△教授のもとでは、アジア諸国の文化比較を学ぶことができる。早い時期からゼミにも所属し、フィールドワークや留学の制度が整っていることも魅力的だ。以上から、私は貴学を志望する。

上に書いた「大学でやりたいこと」を分析しましょう。

will:
私は将来、日本とASEANとの外交で中心的な役割を担いたいと考えている。これまでの日本のアジア外交は、自動車を核とする製造拠点や販路の確保が優先事項となっており、そのカードを相手から引き出すための交渉であったように見える。しかし、市場環境の変化によって、今後日本で重視すべきなのは自動車産業に代わる新たな産業の育成であり、そのために有利な条件を引き出すための外交でもあると考える。

can:
私自身、タイで5年間を過ごし、日本のゲームや玩具、アニメなどのソフトの人気や質の高さを目の当たりにしてきた。現地のコスプレ大会にも毎年参加し、そこで年々の市場規模の拡大も感じてきた。

will:
そうしたコンテンツの海外発信を単に各企業努力に任せるだけでなく、国としても支えていくことができれば、日本を支える大きな産業となるだけでなく、歴史問題を抱えるアジア諸国との関係を改善する上でも役立つだろう。

must:
以上のことを実現するためには、より深く日本のコンテンツ産業を理解しなければならない。また、現地に根付く産業を育てるためには、現地の文化や法律も熟知したい。何より、外交のための交渉術やルールも学ぶ必要がある。これらを学ぶ上で貴学は最適な環境であると考える。○○教授のもとで外交政策を学ぶことができ、△△教授のもとでは、アジア諸国の文化比較を学ぶことができる。早い時期からゼミにも所属し、フィールドワークや留学の制度が整っていることも魅力的だ。

以上のように分けられます。どうでしょうか。将来性重視パターンのバランスがわかったでしょうか。

さて、次回がいよいよ最後です。「志望理由書の書き方 完成編」で大学や企業のデータの調べ方を紹介したいと思います。

志望理由書の書き方(標準編 後半)

前回、志望理由書の書き方(標準編 前半)を書きました。標準編では、志望理由書の中心となる「自分の経験」の書き方をお話しています。

さて、前半で書いたように何かの経験をしてみた、あるいは、もともと自分で何かにずっと取り組んできた、ということがあれば、次に「その経験をどう整理して書くか」を考えます。

整理とは、不要なものを捨て、必要なものだけを残し、そして正しい順番に並べることです。どれだけいい経験をしてきたとしても、整理がしっかりとできていないと相手にうまく伝わりません。では、不要なものと必要なものとはなんでしょうか。

1. 経験の書き方(悪い例)

例えば、帰国子女であることの経験を書きたいとします。何も考えずに書くとこんな感じになることが多いと思います。

私は小学5年生から中学3年生までをタイのインターナショナルスクールで過ごした。タイの生活リズムはゆっくりしていて、おおらかな人が多いため、海外生活が初めての私にとっては過ごしやすい国に感じた。タイに来た当初は、タイの物価が低いことに驚き、日本とは全く異なる経済事情に興味を持った。しかし、経済発展が著しいタイでは、徐々に物価が高まり、その変化の大きさに社会の歪みが生じていることを感じるようにもなった。例えば、不動産の価格が上昇し、結局もともと資産を持っている階層だけがより資産を増やし、逆にそうでない階層についてはどんどん貧しくなっている。そのような状況を体感するなかで、私は経済学を学び、経済発展する国のさまざまな問題の解決にかかわりたい思うようになった。

さて、経験の書き出しとしてこういう内容を書く人はとても多くいます。その前後の内容などにもよりますが、こうした経験の書き方はそれほど良い志望理由書とは言えません。以下、何が良くないのかをまとめます。

  1. 経験したことが、そこで住んでいなくても経済指標を見たり旅行したりすればわかること。
  2. 本人が経験したことは、タイで生活をしたというだけで、具体的なことが書かれていない。
  3. 「変化の大きさに社会の歪みが生じている」の具体例が不動産の価格上昇の話であるが、それが本当に「歪み」になっているのか感覚的でしかない。
  4. 「タイの生活リズムはゆっくりしていて…」という個人の感想は稚拙に見えるので基本的に不要。
  5. 「経済発展する国のさまざまな問題」が何かについて漠然としていて明確に説明できていない。
  6. どれくらい物価が生じたのかを具体的なデータで示せていない。

以上が、この経験で指摘できる改善を必要とする点です。この悪い例をもとに、経験を書く上で必要なことをまとめると、それは何を経験し、何を学び、何をすべきだと考えたのかを具体的かつ客観的に、そして明確に書いていくということです。極めて基本的なことですが、多くの人は文章の内容に自信がないため、ぼかしたり、感覚的に書いたりしてしまいがちです。

2. 経験の書き方(良い例)

以下に、上の経験を修正したものを載せます。

私は小学5年生から中学3年生までをタイのインターナショナルスクールで過ごした。タイに来た当初は、タイの物価が低いことに驚き、日本とは全く異なる経済事情に興味を持った。しかし、経済発展が著しいタイでは、徐々に物価が上昇し、私の興味は実感する物価上昇とデータでの物価上昇との違いに移っていった。例えば、バンコクで人気のレストランの値段はこの5年間で全体的に2倍近く上がった。一方、消費者物価指数は2012年から2017年では約5%しか増えていない。この差がなぜ生じるのかを深く理解したいと思ったのが私の経済学への興味の始まりであった。

調べていくうちに、一橋大学の阿部修人教授が、消費者物価指数と実感値の差を減らそうと新しい指数として「一橋大学消費者購買指数」を作るなど、より正確な経済指標そのものの研究が現在進行形で研究されていることを知った。そこで自分でも、タイの消費者物価指数と実感値との差を知ろうと、学校の友人たちに協力してもらい、100世帯に物価意識調査のアンケートを行いデータ分析を行い、消費者物価指数と比較したものをまとめた。その中で、特に最低賃金が上昇したとき、物価上昇意識がデータと大きく乖離することを明らかにし、それを学校でEEとして提出した。学校の先生からの評価も極めて高く、物価を正確に測ることへの期待や可能性が高いことを強く感じた。そして、将来的には発展途上国におけるより正確な経済指標を専門的に研究したいと思った。

 

このように、できるだけ具体的に事実、そこから経済学の中でも具体的な問題意識、そして自分の経験へと全体を通して具体的に話を展開していくことが重要です。徐々に具体的にしていくことで、あなたが何に取り組みたいのかが見えてくるようになります。最初は字数制限にかかわらず長い文章になってもいいので、できるだけ具体的に書いていってください。

3. 経験を書くときは逆三角形をイメージする

重要なことをまとめます。経験を書くときは、まずは大きな話から始めて、徐々に具体的に書いていくことを意識します。その際、ぼかすことなく、具体的に、具体的に、と書いていくことで、相手もあなたの人物像を想像できるようになってきます。

イメージするべきは、逆三角形です。抽象的な内容から、徐々に具体的に、そして最終的には唯一の存在としてのあなたに絞っていくようなイメージです。例えば、上の経験を書いている文では次のような流れになっています。

① 経済学に興味を持った。(抽象)
② 経済指標と実感値の違いに注目した。(抽象→具体)
③ 先行研究を見つけて、自分でも調査してみた。(具体の展開)
④ 経済指標に表れない要素を発見して、もっと深く研究したいと思った。(今後への課題)

ただ具体的なことだけ書いても日記のようになったりしますし、抽象的なことだけ書いてもただの情報の羅列のようになったりします。抽象から具体へと徐々に話を展開することを意識してください。なかなか適切な言葉が見つからないこともありますが、調べたり、本を読んだり、先生に聞いたりして、なるべく適切な言葉を探していく作業、それが志望理由書です。

次回は発展編として、近未来でやりたいことの書き方について説明したいと思います。