上海教育事情ブログ

上海の日本人向け教育事情についていろいろと書いていきます。学校、塾、語学教室、文化教室、スポーツ教室など。

志望理由書の書き方(発展編)

前回、志望理由書の書き方(標準編 後半)を書きました。これまでの内容をまとめておきましょう。

これまで、

  1. 入門編:志望理由書を書くときの心構え

  2. 基礎編:志望理由書を書く流れ

  3. 標準編 前半:志望理由書の中心となる『自分の経験』の増やし方

  4. 標準編 後半:志望理由書の中心となる『自分の経験』の書き方」

とお伝えしてきました。ここまでしっかりと書くことができれば、他に何が重要になるかというと、それは「大学(or 企業)で何がしたいのか」という「近未来について」の内容です。発展編では、「近未来」の内容の書き方についてお話したいと思います。

1. 「will」「must」「can」が一致すること

近未来でやりたいことを書く上で、最も大事なことは「will(意思)」「must(義務)」「can(可能)」が一致することです。このうちのどれか一つが欠けても説得力が欠けてしまいます。

例えば、次のような内容を書いたとします。

私は都市開発の勉強をしたい。特に、オリンピックや万博などの国際イベントを基にした都市開発には疑問があり、より効果のある都市開発を研究することに大きな意義がある。

ここには、「都市開発を勉強したい」という「will」と「研究に意義がある」という「must」はあります。しかし、それをあなたができるのかという「can」がわかりません。もちろん、自分の経験ですでに「can」を伝えられている場合はそれで大丈夫です。しかし、もし明確な「can」が示せていないならば、自分にそれができるという根拠を示しましょう。それを踏まえて、上の文章を直すと次のようになります。

私は都市開発の勉強をしたい。特に、オリンピックや万博などの国際イベントを基にした都市開発には疑問がある。私自身が高校3年間を通して市役所の町おこしにボランティアで携わってきたため、都市開発の難しさは理解できる。だからこそ、より効果のある都市開発を研究することに大きな意義がある。

先ほどの文に一文だけ加えましたが、それでも受ける印象は大きく違うはずです。こうして、自分が近未来でやりたいことには「will」「must」「can」を一致させることを意識してください。

2. 「will」:「must」:「can」の割合を考える

さて、「will」「must」「can」を一致させることは重要ですが、それにしても人によってその割合は違ってきます。例えば、経験豊富ですでに何かの実績を残しているような人であれば「will」:「must」:「can」=2:3:5くらいにする、などの比率を考えることです。以下、3つのパターンに分けておきましょう。

  1. 将来性重視パターン
    「will」:「must」:「can」=5:3:2
    経験や知識が不足している人はこのパターンを考えてみましょう。将来的な可能性をできるだけ明確かつ詳細に書くことに大半を割きます。ただし、関連する見識や知識をつけておくために、関連することに取り組んでいる人へのインタビューや専門書を3冊以上読むことなどで現実性を補うようにしましょう。

  2. 経験重視パターン
    「will」:「must」:「can」=2:3:5
    自分の経験や実績に自信がある人はこのパターンを考えてみましょう。有名な大会やコンクールで賞を取っていたり、誰にも負けないと思うような経験をしてきた人はそのことを書くのに大半を割きます。その際、相手に伝えるべきことに絞って書くことを忘れずに。

  3. 社会性重視パターン
    「will」:「must」:「can」=3:5:2
    比較的基礎学力が高い人はこのパターンが使えます。高校の平均評定が4.5以上の人や、有名大学に在籍する人などは説得力が増します。その場合は、自分のできることやしたいことだけでなく、問題の重要性と解決の意義やそのメリットを論理的に説明することに大半を割きます。もちろんその問題に自分が取り組みたいという意思も必要条件です。

以上のように、「will」「must」「can」の割合を考えることは極めて重要です。また、相手が求めている人物像も調べて、何に比重を充てるかということも考えましょう。例えば、慶應義塾大学総合政策学部や環境情報学部のAO入試では、A方式は「将来性重視」、B方式は「社会性重視」、C方式は「経験重視」であると思われます。あるいは、慶應義塾大学法学部のFIT入試は「社会性重視」に近いように思います。自分が出願するところに合わせて、しっかりと配分を決めて書くようにしましょう。

3. 「大学で学びたいこと」書き方の例

それでは実際に「大学で学びたいこと」について書いてみます。今回は、「将来性重視パターン」で書いてみようと思います。

私は将来、日本とASEANとの外交で中心的な役割を担いたいと考えている。これまでの日本のアジア外交は、自動車を核とする製造拠点や販路の確保が優先事項となっており、そのカードを相手から引き出すための交渉であったように見える。しかし、市場環境の変化によって、今後日本で重視すべきなのは自動車産業に代わる新たな産業の育成であり、そのために有利な条件を引き出すための外交でもあると考える。私自身、タイで5年間を過ごし、日本のゲームや玩具、アニメなどのソフトの人気や質の高さを目の当たりにしてきた。現地のコスプレ大会にも毎年参加し、そこで年々の市場規模の拡大も感じてきた。そうしたコンテンツの海外発信を単に各企業努力に任せるだけでなく、国としても支えていくことができれば、日本を支える大きな産業となるだけでなく、歴史問題を抱えるアジア諸国との関係を改善する上でも役立つだろう。
以上のことを実現するためには、より深く日本のコンテンツ産業を理解しなければならない。また、現地に根付く産業を育てるためには、現地の文化や法律も熟知しなければならない。何より、外交のための交渉術やルールも学ぶ必要がある。これらを学ぶ上で貴学は最適な環境であると考える。○○教授のもとで外交政策を学ぶことができ、△△教授のもとでは、アジア諸国の文化比較を学ぶことができる。早い時期からゼミにも所属し、フィールドワークや留学の制度が整っていることも魅力的だ。以上から、私は貴学を志望する。

上に書いた「大学でやりたいこと」を分析しましょう。

will:
私は将来、日本とASEANとの外交で中心的な役割を担いたいと考えている。これまでの日本のアジア外交は、自動車を核とする製造拠点や販路の確保が優先事項となっており、そのカードを相手から引き出すための交渉であったように見える。しかし、市場環境の変化によって、今後日本で重視すべきなのは自動車産業に代わる新たな産業の育成であり、そのために有利な条件を引き出すための外交でもあると考える。

can:
私自身、タイで5年間を過ごし、日本のゲームや玩具、アニメなどのソフトの人気や質の高さを目の当たりにしてきた。現地のコスプレ大会にも毎年参加し、そこで年々の市場規模の拡大も感じてきた。

will:
そうしたコンテンツの海外発信を単に各企業努力に任せるだけでなく、国としても支えていくことができれば、日本を支える大きな産業となるだけでなく、歴史問題を抱えるアジア諸国との関係を改善する上でも役立つだろう。

must:
以上のことを実現するためには、より深く日本のコンテンツ産業を理解しなければならない。また、現地に根付く産業を育てるためには、現地の文化や法律も熟知したい。何より、外交のための交渉術やルールも学ぶ必要がある。これらを学ぶ上で貴学は最適な環境であると考える。○○教授のもとで外交政策を学ぶことができ、△△教授のもとでは、アジア諸国の文化比較を学ぶことができる。早い時期からゼミにも所属し、フィールドワークや留学の制度が整っていることも魅力的だ。

以上のように分けられます。どうでしょうか。将来性重視パターンのバランスがわかったでしょうか。

さて、次回がいよいよ最後です。「志望理由書の書き方 完成編」で大学や企業のデータの調べ方を紹介したいと思います。